竜宮城からの退職

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「またか……」 買い物の帰り道、振動したスマートフォンに表示されたのは、「今後ますますの活躍をお祈り申し上げます」という文字列だった。 いわゆるお祈りメール、面接の落選を知らせる就活生の天敵だ。 バツイチ無職の三十路女性など、そう簡単に雇ってくれるところばかりではないと知ってはいたが、それにしたってここまで落ちるとは想定していなかった。 こんなことなら会社を辞めなければよかった。 新卒入社した会社を寿退社したのは2年ほど前のことだ。運命の相手と信じた彼と無事結ばれた私は幸せの絶頂にあった。 ところが結婚して数か月もたつと、徐々に彼の本性が露呈し始める。 家事もろくにやらず、会社を辞めてパチンコに行き出し、ついに浮気まで始めたところで私の堪忍袋の緒がプッツンと切れた。 「出ていけ!」 彼はその時になって愛してるだとかそばにいたいだとか歯の浮くようなセリフを言い出したが、とっくに冷めていた私は容赦なく彼を脅して離婚届を書かせ、役所に提出した。 晴れて自由の身となった私はその足で就職活動に向かった。SEとしての活動経験とプログラミングの知識があれば、どこかに入れるだろうという私の甘い見通しは、半年でひっくり返された。
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