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ある日突然、まさかと思うような出来事が、身近で起きる場合がある。
もう10年以上も前、私の地元で事件が起きた。
つくづく、治安の悪化を嘆いたものだ。
いつも寄っていた大型スーパー店内部には、娯楽施設もたくさんあ
った。
休日に友達数人と、遊びに行った時の事だ。
4階建てのスーパーと併設して作られた駐車場は、満車だった。
仕方なく、屋上駐車場に停めようという話になった。
普段は絶対に行かない
、場所だ。
嫌な予感がした私の反対も聞かず、結局、屋上まで行ってしまった
。
さすがに車は、端の方にちらほらあるだけだ
った。
ラッキーなどと言いながら、友達がエンジンを止めようとした時だ
。
駐車場の少し左端に、何かがあった。
40cm四方ぐらいの
段ボール箱が、ぽつんと所在無げに置いてある。
置き去りにされた箱の中身が、気になった。
「何?あれ。忘れ物かな?」
当然、話題の中心となり、私達は、あらぬ想像をかきたてた。
「違うって!きっと爆弾だよ。」
Bが冗談半分で言い、
「劇物かも・・・。」
などと私が言えば、
「赤ちゃんの死体でも入ってんじゃないの?
ミイラ・・・とか。」
Cも、負けずに乗ってきた。
「1億円の札束かも知れないよ?」
再びBが冗談めかして
いる最中、何を思ったのか、友達のひとりが
、ずかずかとその箱に近付いて行った。
しかも、中身を確認するため手をかけようとしている。
持ち主が困っているだろうから、という親切心らしい。
不吉な予感に襲われた私は、力づくで、好奇心丸出しの友達をその場から引き離した。
私には、箱自体厄介な代物に思えた。
面倒な事件に、巻き込まれたくなかったからだ。
それから3日後、夜7時のニュースで衝撃的な報道が流れた。
「今日、いわき市T町の大型スーパー○○の○○店屋上駐車場で、来客から、不審な段ボール箱が置いてあるとの通報を受けました。
警察が調査したところによると、中から、成人男性の遺体の一部と思われる頭部が発見されました。
頭部は、鋭い刃物の様な物で切断されたと観られ、死後1週間近く経っていた模様です。
警視庁では、殺人及び死体遺棄事件として、引き続き調査を行う・
・・。」
画面には、見覚えのある建物と駐車場、・・
・そして実物と同じ大きさの段ボール箱が撮(うつ)されている。
これは・・・、この○
○店というスーパーは
、あの場所ではなかろうか。
ドラマの様な本物の殺人事件に、頭の中が混乱した。
建物の周囲には、黄色い立入禁止のテープが張られ、テレビ番組で見た事のあるリポータ
ーがマイクを持ち、口角泡を飛ばす勢いで状況を説明していた。
しばらくの間、地元では、寄ると触るとその事件で持ちきりだった
。
時代の波に圧され、今や閉店の危機に追い込まれているスーパーだが・・・。
いつの間にか、まことしやかな噂が立つようになった。
屋上駐車場に、首のない男性の幽霊が出ただの、犯人らしい人物が歩いていただの・・・
、真偽のほどは定かではなく、数え上げればきりがない。
結局、犯人が逮捕されたかどうかは不明だ。
あの時、箱を開けなくて本当によかったと、つくづく思う。
もし開けていたら、とんでもない事態になっていたに違いない。
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