同級生の秘密

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【優の真実】  恐ろしくも美しき青い炎が消え去り、(ゆう)の姿も革のジャケット姿へと戻る。  転葬者(トランサー)として転逝態(レガシィ)を浄化する同級生の姿。美咲はしばし見惚れていたが、ぽんっと肩に誰かの手が置かれたのにハッと我に返り、それが担任の明智(あけち) 恵瑠(めぐる)のものとわかると顔を合わせつつ目を開く。 「せ、先生!?」 「ん、気にしなくていいよ、望月の事は全部知ってるから」  その言葉の意味する事はすぐに理解できた。  恵瑠の前にやって来た優が小さくため息をついてペコリと頭を下げ、美咲の頭に乗っていたコウモリこと(くれない)の姿を恵瑠は捉え、目線を優へと戻す。 「ごくろーさん、でもなるべく学校内ではしてほしくないかな?」 「仕方ないだろ、金澤の奴が……」 「人のせいにしない。ま、被害とかケガとかないから、大目に見てもらうようには掛け合っとくよ」  ぽんっと手帳で優の頭を軽く叩きつつも、恵瑠は何処か安堵した様子で背を向け今度は美咲の所へと歩み寄る。 「金澤、君はしばらく望月といるようにしなよ。彼女から色々聞いといてね」 「は、はい……え?」  その違和感を悟った時には既に恵瑠はおらず、きょとんとする美咲は優と目を合わせて沈黙。  数秒ほどの間の後に首を傾げた優が『なんだ?』と問いかけ、2秒ほどの硬直の後に美咲は顔を真っ赤にして大きく仰け反った。 「え、ええ、え? え? えぇ!? も、望月くんって……お、お、女の子?」 「んな驚く事かよ。確かにこういう格好してっからわかりづれーけど、別に隠してはいねぇ」  全く話したことがなかった故に全く気づかなかった真実。  だが改めて優を見てみると女性らしさは確かにあり、美咲はこれまで気づかなかった自分の無頓着さを責めるように何度も頭を下げ続ける。 「ごめんなさいごめんなさい! 気づかなくて……!」 「いや、いいって……」  ペコペコと頭を下げられる優もどうすればいいか戸惑い、その様子をふふっと笑いつつ紅は飛び上がり、空へと去っていく。 「わしは先に帰ってるぞ、せいぜい仲良くするのだな」  からかい気味の口調でそう言い残した紅に舌打ちで応えた優だが、気を取り直し恐る恐る上目遣いで自分を見る美咲と目を合わせる。  彼女に話すべきこと、彼女が知らなければならないこと、それが彼女の心身の負担になること。  それらを考えつつ、両手を美咲の肩に手を置いて彼女に前を向かせ、やや驚き気味ながら目を合わせてくる事に応えるように優は己の意思を伝えた。 「お前にはこれから色々話さないといけない、解決するまで無理もさせたりするかもしれない。その間だけでもいい、俺を、信じろ」  赤みがかる瞳に青い炎が燃え盛っているように、情熱の炎が燃え盛っているのが美咲は理解する。  強い意志、強い思い、強い言葉。  自分へ向けられる確かなものは心に響き、美咲は頷きつつ微笑みで応えた。 「うん、信じる。望月くん……じゃないね」 「優でいい」 「それじゃあ、優、よろしくね。私の事も、美咲でいいよ」  二人の間に小さな繋がりが生まれ、それは見えなくても確かにあるもの。  その様子を少し遠目で恵瑠は見守りながらスマートフォンの電話をつけ、ある人物へと事の次第を話していた。 「もしもし、転葬者(トランサー)の事だけどさ……うん、そう……被害とかはないから、大丈夫……」  話し相手は明星金麗(めいせいきんれい)高校とは別の場所で電話を受け、小さくため息をつきながら濡れた指を隣の人物に舐めさせ、そして小さく微笑む。 「そうだな……僕も近い内に転葬者(トランサー)の子に会いに行くよ。大した理由じゃないさ、ほんの少し興味があるだけ……適当な理由を作ってそっちの校長には言っておいてよ」 「うん、わかった。それじゃ仕事に戻るから……セイラもイブと遊びすぎないようにね、また連絡する」  通話を終えた恵瑠は校舎へと戻る優と美咲の姿を確認し、腕時計を見て昼休みがもう終わると気づき自身も急ぎ授業の準備へと戻っていく。  始まった運命、動き出す運命、物語は静かに紡がれ未来へと繋がり始めた。 to be continue next time……
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