静寂の戦士

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男が叩くキーボードの音だけが、部屋の中に響いていた。 滑らかに、そして鋭く流れるその指先は、時に強く、決意を込めて打ち込まれる。 僅かに動く頭部は、彼が2台のモニターの全てを見渡している事を伺わせた。 迷い無き左右の手は別の生物のごとく自在に動く。彼の経験と、その実力が可能にした技巧であった。 どれ程の時が流れたのか、規則的で無秩序な音が、ひたすらに静寂の空気を切り続ける。 やがて、指は動きを止めた。 肩がゆっくり大きく上下し、深く吸い込んだ息を、時間をかけて一気に吐き出す。 張り積めた空気が、静かに緩んでいく。それは、無限とも思われた緊迫と疲弊の全てが終わり、彼が解き放たれた事実を意味していた。 窓に目を移すと、澄み渡る空を雲が飄々と流れている。 ベランダに出た彼は煙草に火を着け、深く、先程の呼吸を敢えて繰り返すかの如く、深く吸い込み、ゆっくりと煙を吐き出した。 その喉奥から言葉が漏れ出す。 「またBEST8か…次のギルド戦こそ…。」 心に降り積もる闘争心を、今はひと時深層に納める。 そして戦いを終えた戦士は、潔く夕食の準備を始める決意をしたのだった。 終
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