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【Ⅱ】
穴に横たえていたのは、やはり亡骸だった。少年の雇い主で、昨夜、病で亡くなったという。
少年は自らを〝ダン〟と名乗り、穴を拵えた事、屋敷を廃墟と思い込んでいた事を詫びた。
「なぜこんなところに。人を雇うような男なら、入れる場所くらいあるだろう」
彼は幼い両手にこびりついた土を払いながら、
「旦那様は異国のお生まれで、代々のお墓の場所を私は知りません」
項垂れて目を伏せ、静かに続ける。
「それに、野薔薇のそばに埋めてほしいというのが、旦那様の遺言だったのです」
「君も入れというのも、遺言か」
彼はゆっくりと顔を上げ、力強く頷いた。
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