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「…ならば、少年。僕が君を買おう」
夜風が少年の短い髪と木の葉を揺らし、彼の瞳もまた涙と動揺に揺れていた。
「主人が居なければ生きられないなど、そんなものは幻想だ」
少年は頑なに首を振ったが、主人をその穴に眠らせて構わないと条件を出すと、ようやく頷いた。彼は己の今後より、亡き主人の遺志の方が大切らしい。
僕はほとほと呆れながら、少年に助力する形で亡骸に土を被せた。
「嫌になれば出て行けば良い。居たければ好きなだけ居れば良い」
野薔薇を摘んで土の上に置くと、少年は安堵した眼で献花を見つめ、不安げに眉を下げる。
「ですが…」
言い淀む彼に、僕は何の足しにもならない言葉を向けた。
「こんな手間はこれきりだ。僕は死なない。」
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