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 アストさんは、とても不思議な人だ。  表情があまり変わらないのもさることながら、食事はいらないというし、水も飲まない。  私に見せないだけかと思ったけれど、買いに出ない限り、お屋敷には口にできるものが何もなかった。  ずっと出されていたパンや牛乳は、毎日アストさんが手配していたのだと、死ぬのを諦めた日に知った。  だから同じ日に、「あなたが召し上がらないなら、私も戴きません」と申し出た。主が食事を摂らないのに、使用人だけ戴くわけにはいかない。  はじめは気に留めていない様子だったけれど、二日目に早々と衰弱しだした私を見て、渋々水を飲んでくれてからは、毎食、私の作るものを召し上がるようになった。
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