PM03:00 青春アフタヌーン

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PM03:00 青春アフタヌーン

アフタヌーンティーという言葉はいつ頃出てきたのか、若者を呼び立てる鳩時計は今日もきっかり三度鳴く。 中には帰宅部を理由に、いずれは受験を理由に。様々な思惑あれど、それなりに近場の高校生が立ち寄る比率は、この時間帯。 音楽を流さない風変わりな喫茶店ではあるが、長年暗黙の了解で、お客はあまり私語を口に出さない。勿論、喋ったとしても怒られない。ただ、店の雰囲気がそれを成立させている。 それを知らない学生が、乱暴にベルを鳴らし、騒ぎ居着くことも珍しくない。そして男女関係なく、マスターの人柄と魅力に圧され、物静かな常連様になるケースも、数多に存在する。 ある女子高生の場合。 ギャル相応しく、群れを成す4人は青春を謳歌していたのかもしれない。エンドレスなお喋りが店内を占め、私はいつも通り心は白けつつも、唯一の仕事をこなす。周りの客は気にも留めないというか、時間の問題と思っているのか。 さて、マスターがさも日常のように珈琲と、オーダーにないケーキを人数分。無言で鮮やかな想定外を目の前に出され、吃驚した彼女達は当然、ウェイターをした彼に目が行く。 歳は相当上を行くはず、だが端整な顔立ちに、眉間以外にも皺を寄せている。困り顔のからの微笑みは、人差し指を口に添えて。 反応は「意味不」と、だらだら店を後にた3人を除き、驚き不動のままで置いていかれた女の子。唯一奇抜な髪染めではなく、大人しい茶髪のブワッとしたパーマネント。初心な背伸びをした子は、初心ながらに初恋をした、と後に語るのだ。 常連になりたいと、ストレートパーマを当て傷んだ髪を肩まで切り落とし、勉強を口実に閉店までマスターの空間に居ようとした、淡くも濃縮した青春。進学を機に店へ顔を出さなくなった彼女も、もう立派な大人の女性。 「やっぱり口説くんだったなぁ」 婚約指輪をチラつかせ、海外移住を報告しに飲み納めへ来た彼女は、あの一時を過ごす少女と重なるようで。勘弁してくれと微笑むマスターと私の前には、変わらぬ茶髪のストレートボブ、相応に着飾る1人の女性が、閉店までの他愛ない会話、最初で最後のわがままを過ごしたのだった。
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