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友人のことは気に入っていたらしく「月に移住するなんて、変わり者だよね」なんてヘラヘラしながらロッカーで化粧を直しつつ、私に言っていたくせに本人の前では「味方です、仲良しです」アピールにいとまがなかった。
勘が鋭い性格の友人は「ちょっと苦手かな」と以前から私にこぼしていたから、適当にあしらわれるのは当たり前だ。
「さっきも電話かかってきたよ、どうにかしてください、私が信用を失ったのはナナにも原因があるからだって。紛らわしいことしたから、いけないんだって」
「どうにかして、悪者を作らなくちゃ息もできないタイプってやつか……急に襲撃されてもあれだから、根回しだけしとけば?」
「ミミと同じことするみたいで本当はやりたくないけど、仕方ないか」
「自分を守るためだからね。それはそれ、これはこれ」
私は強風対策にと二重構造になったガラス窓越しに、かつて住んでいた星を眺めた。
青く光るそこで、いまも誰かの命を救おうと懸命に生きる人がいたり、家族とつかの間の安らぎを味わったり、逆に月を見上げている人がいるかもしれないと思うと、やはり里心みたいなものがぐっと押し寄せてくる。
「今日も青くてきれいに光っているわね、見える?」
「地球は青かった、は嘘じゃなかったのね。きれいだわ。今日は風が強いし寒いから、余計にそう見えちゃう」
「月がキレイですね、ならぬ、地球がキレイですねって、男女が囁きあうのかしら」
あら素敵、と友人は私がいつになくセンチメンタルに放った言葉に同意してくれた。
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