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あれから、私は休み時間中、友達や先生に事情を問い質す為に走り回った。だが、皆、同じ台詞しか吐き出さない。
「ごめん。それは言えないんだ。どう説明すればいいか分からなくてね」
「取り敢えず、『おめでとう』としか言えないな」
皆が皆、「おめでとう」という台詞を私に伝えに来るが、その理由については固く口を閉ざしている。そんなやり取りが何回も続き、私のイライラはピークに達していた。
「じゃあ、もういい! 自力で突き止めてやる!」
私はそう叫んで、学校を飛び出した。昼休みに裏門を抜け出し、自宅へと帰った。
「ただいま!」
と怒鳴りながら、靴を脱ぎ散らかす。大声で返事しても誰も居ない事は分かっている。父が仕事中なのは言わずもがなであり、同時に母もこの時間はパート中だ。家には今、私一人だ。
階段を上がり、自室に転がり込む。今から私が行うのは家捜しだ。訳の分からない「おめでとう」の意味を絶対に解き明かす。その為に、少しでも手掛かりになりそうな物を探したかった。
まずは机の引き出しの中、そして、クローゼットの中、ベッドの収納棚の中、全ての物を引っ張り出して悉く調べ尽くした。だが、意味のありそうな物は何もない。普通の小物や本、服、化粧品……。そんな物ばっかりだった。
「空振りか……。部屋に何かあると思ったんだけど……」
散らかした物を元に戻し、私は意気消沈してベッドに倒れ込んだ。倒れ込んだ頭がボスンと枕に着地する。
カサッ
変な感触。違和感を覚える。私はすぐに体を起こし、枕を手に取った。外側から両手で枕を揉みしだく。
カサッカサッ
この枕の中身は綿の筈だが、綿の柔らかい感触に混じって何か固い物が混ざっている。枕カバーを外し、ファスナーを開いて中に手を突っ込んだ。指で綿を押しのけ、違和感の正体を引っ張り出す。
「これは……」
出てきたのは一冊のノートだった。ノートにはボールペンで「日記」と書いてある。あれ? でも、私、日記なんか書いてたっけ? それも全く記憶になかった。
「でも、そっか……。この中に何か手掛かりがあるかも……」
開こうとして、一旦、手を止める。何か見ては不味いような、何とも言えない不安を感じたからだ。
(開かない方がいいんじゃないの? そっとしておこうよ……)
心の声が私に囁く。
(開いたら、後戻りは出来ないよ……)
そんな事は分かっている。でも、何も分からないのは嫌だ。知ることに対する恐怖は確かにある。でも、知らずに漠然とした不安を抱え続けるのと、知って後悔するのとでは全然違う。私は後者の道を選びたかった。
「よし! 読もう……」
意を決した私は日記に手を掛け、おそるおそる頁をめくっていった。
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