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「5月4日(水)
今日から日記を始める事にした。真姫に勧められたからだ。
その日にあった事を整理する事で、1日1日を充実して過ごせるようになるらしい。「それは良いな」と思って始めた。
ちなみに、今日からゴールデンウィークだ。今日は家でゴロゴロした。特に何もなく、スマホでYouTubeを見た。面白かった。最初の日記はこんな感じで良いだろうか。
誰かに読まれるのは嫌だから、枕の中に隠そうと思う。
ちなみに、明日は真姫たちと出かける。
5月5日(木)
真姫たちと出かけた。楽しかった。
でも、帰り道で襲われた。知らない男だった。
「嫌だ」って言っても、抵抗しても、やめてくれなかった。
たまたま通りかかった人が警察を呼んでくれた。男は駆け付けた警察に捕まった。私は警察に連れて行かれて、色々と聞かれた。嫌だった。辛かった。
両親が迎えに来てくれた。泣いている私を慰めてくれた。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い
今日は眠りたくない。色々と思い出してしまうから。
日記を書いて、眠気を覚ましてる。何でもいいから書かなきゃ。
辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛
5月6日(金)
何もする気力が無い。もうヤダ。昨日の事が全て夢であったらと思う。
日記を書くのも正直、めんどくさい。辛い。
死ぬことも考えている。その時はこの日記を遺書代わりにしようかな。
5月7日(土)
今日、変な人達がウチに来た。どっかの研究室の人みたいで「抽選でアナタが選ばれた」とか言ってる。訳が分からない。両親が「良かったね」などと言ってくる。何の事だろう。
何か知らないが、明日、何かが届くらしい。どうでもいい。
5月8日(日)
今日もぼーっと過ごす。何もしたくない。ベッドで横になる。
出来ることなら、もうずっと横になりたい。部屋の外に出たくない。
母が心配しているようだ。さっき、部屋に来て、白湯と一緒に変な薬みたいなのを置いて行った。
母に聞いたら、睡眠導入剤らしい。よく眠れるようにって。
眠る前にこの日記を書いている。書き終わったら、薬を飲んで寝ようと思う。学校には行きたくない」
「……」
あまりの内容に絶句した。これは本当に私の日記なのだろうか?
もし、本当に私の日記だとしたら、私は……。
思わず、日記を取り落とす。その瞬間に記憶がフラッシュバックする。吐き気が込み上げる。
そうだ……。これは間違いなく私の日記だ。
遊びに行った帰り道。真姫と駅で別れて、私は家に向かう。その道のりの途中には人通りが極端に少ない、細い路地があった。夜遅い時間で夜道が暗いので少し躊躇ったが、近道という事もあり、私は構わずにその道を進むことにした。そして……。
嫌だ。これ以上は思い出したくない。辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い……。
「失礼するよ」
急に背後から声を掛けられた。振り返ると、白衣を着て眼鏡を掛けている怪しい男性が立っていた。でも、不審者や泥棒の類いでは無さそうだった。傍らに父と母、それに真姫が立っていたからだ。
「貴方は誰?」
私の問いに答えず、男性は私の部屋にずかずかと入ってくる。そして、床に落ちている日記を拾って頁をめくり、私と日記を交互に見比べた。そして、頭を抱える。
「……そうか。本人の記憶を刺激したくなかったから、両親や友人に箝口令を敷いたのだが、まさか日記とはな……」
そして、男性は私の目をじっと見据え、穏やかな口調で私に語りかけた。
「仕方ない。ひとまず、君に全てを打ち明けよう」
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