焦燥

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 真っ白な雪が降り積もった窓の外を見やる。周りには私がいるログハウスと同じ作りのものが何棟か建っていた。家族連れやカップルに人気らしく、ずっと先まで予約でいっぱいだそうだ。すっかり雪に埋もれ、看板だけが顔を出している状態の駐車場には、私のを含め五台の車が止まっていた。  ここから見えるどの棟からも石油式のイミテーション暖炉の赤い光が滾っていた。昼過ぎだというのに、明かりがやけに明瞭なのは、止むことを忘れてしまった雪が夜の帳を下ろしたように辺りに闇を積もらせているせいだ。  その真っ白な闇を見つめながら、何周目かに突入した考えを巡らせ私は頭を抱えた。早くここから離れなくてはいけないのに。  唯一の帰り道である県道は、雪の重さに耐えられなくなった大木に塞がれてしまった。私がそれを見つけたのは、帰路に着こうとした二時間前のこと。二分ほど走らせたところで立ち往生してしまった。人一人通る隙間もない二車線を前に、Uターンを選ばざるを得ず、こうして妻と向き合っている。
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