千二百億番目の男

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 聞き終えたのち、彼はしばらく黙り込み、やがて絞り出すように答えを口にした。 「なるほど……。面倒な事を平然と仰るものだ。ですが、今申されたことは概ね可能です。もちろん、本来は莫大なポイントが必要なんですがね。まあ、あなたには関係のない事ですな。ともかく分かりました。項目に盛り込みましょう」 「ありがとうございます」 「では、これで最終決定でよろしいですかな?」  僕は大きく一つ頷いた。 「では、少々お待ちいただけますかな」  小太りの男はそう言ってから大きなため息を一つ吐いた。  それからファイルを開き、あちこちとページをめくったり、小さな声で何かを呟いたりしていた。  それを見ながら何となく申し訳ない気持ちにはなる。  ただ、せっかく新しい一歩を踏み出すチャンスが巡ってきたのだ。  それを活用させてもらうのは悪い選択じゃないはずだ。  しばらくして、小太りの男は見ていたファイルから顔を上げて僕に言った。 「ふむ、では、全ての準備が整いました」 「は、はい」 「そのドアからお出になって下さい。あなたの新しい人生が始まりますむ 「あ、ありがとうございました」  僕が彼に一礼をすると、小太りの男は何も言わず少しだけさみしそうに笑った。  そして、彼が手で示した通り、入ってきたドアから再び部屋を出た。
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