千二百億番目の男

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 目を開けると、僕の目の前には青空が広がっていた。  陽光が眩しい。  どうやら寝転がっているらしいと気付き、体を起こしてみる。  目の前には、白く美しい石壁が聳え立っている。  倒れていたのは地面の上で、周囲には俺た枝や葉っぱなんかが散乱していた。 「一体、何が……」  頭が混乱してる。  ちょっと落ち着かないと……。  ええと、確か僕は寝坊して……慌てて家を飛び出した。  で、アパートの階段を駆け下りようとして、バランスを崩して……。  気が付いたら今の状況になっていたわけだ。  体中のあちこちが痛むのは分かる。  けど、ここは断じてアパートの周囲じゃない。  うちのアパートの壁は、こんなに綺麗じゃない。 「ここは……どこなんだ」 「おお、王子!! 王子!!」  突如背後から子をかけられた。  振り返ると、そこにいたのは一人のイケメンだった。  金髪に碧眼。顔立ちからして明らかに日本人ではないけれど、何を言っているのかは分かる。 「お……王子? 僕が?」 「何を仰っているのですか王子。ひょっとして、バルコニーから転落したショックで記憶が混乱されているのですか?」 「いや……その……」 「とにかくご無事で何よりでした。王やお后様も大変心配なさっています」  イケメンの顔を見ながら、僕の中には一つの答えが浮かんでいた。  どうやら僕は異世界転生、という奴に巻き込まれてしまったらしい。  僕は平穏に生きていきたいだけだと言うのに。  誰が何の目的で僕をこんな目に遭わせてくれたんだか……。 「やれやれ、勘弁してくれよな……」  こっちのセリフですな。  どこからともなくそんな声がふと聞こえた。  ……まあ、気のせいだろう。
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