千二百億番目の男

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「死なれましたか?」  突然背後から声をかけられ、振り返ってみると爺さんが一人立っていた。 「どうやらそうらしいです」 「随分とすっきりしたお顔をなさっている。では、あの世へ案内いたします」 「あ、お迎え、という奴ですか」 「そう言う事になりますかな」 「迅速なんですね」 「仕事ですから。では、早速……」 「ええ、お願いします」 「手を……よろしいですかな?」  さし出してきた爺さんの手をぎゅっと握る。  その途端、視界が真っ白になった。  気が付くと、そこは大きな門の前だった。  白く艶やかなその門の扉は開かれ、ぞろぞろと恐らく僕と同じ死者たちがくぐっていく。 「ここは……」 「ですから、あの世です。天界ともいいますが」 「天界……」 「あの門をくぐった先が手続するための場所になってます。手続きに関しては、くぐった先に係の者がおりますので」 「ご丁寧にどうも」 「いえいえ、案内が仕事ですから」    爺さんは丁寧に頭を下げてから、またどこかへ歩いて行った。  ひょっとすると、あの人が死神って奴なのかもしれない。
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