千二百億番目の男

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 他にも、いくつも項目を決めて行かねばならなかった。選びたい放題という事は、逆に言えば全ての項目について選択肢を埋めて行かねばならない、と言う事だかららしい。 「しかし、転生前から自分のスペックがこんなに分かっちゃったら、来世が詰まらないのでは?」 「記憶は原則としてリセットされるのが決まりですから」 「ああ、そう言う事か」 「普通は先に拘りたいポイントを決めるんですよ。そこの部分だけ選択して、後はこちらで自動処理となるわけです。ですが、特別転生権をお持ちの場合は、全て自由に決められるわけですから、逆に言うと全て決めて頂かねばならないわけですな。どうしたって特別転生権の方は時間がかかるわけで、別室にご案内せにゃならんというわけです」 「厄介なシステムですね」 「いやいや、そんな事はありませんよ。この作業をしていると言う事は、我々がきちんと生命を回している証でもありますからな。それに、ここの仕事は意外と単調でね。こういうスパイスのおかげで気持ちが引き締められている部分もあるのです。とはいえ、最近は死者の数も増えましたから、あっという間に次の特別転生権授与者が出ますけどね」  天界ジョークというやつか。  小太りの男はけらけらと笑うが、正直僕は素直に笑えなかった。  それどころか、来世がそれほど喜ばしいものに思えなくなってきた。  だから、さっきから頭の片隅に浮かんでいたとある思い付きについて、この小太りの男に聞いて見ることにした。
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