千二百億番目の男

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 実りの少ない人生だった。  彼女も結局できなかったし、もちろん独身。  仕事でも何の成果もあげられなかった。  趣味で花咲くわけでもなし。  挙句に階段から足滑らして落ちて死んでしまうとは。  なんて詰まらない幕引きだろうか。  享年三十六歳。あ、数えで幾から三十七歳になるのか? まあ、どっちでもいいか。  アパートの階段下で、頭パックり割って死んでいる自分を見下ろしながら、なんというか妙に冷静だった。  あー、こりゃ死んでるわ、と一目で理解できたからかもしれない。  各所には申し訳なく思ったりもしたが、ちょっとだけすっきりもしていた。  正直、この先にも明るい人生があったかどうかわからない。  一足先にゴールで来て良かったんじゃないですか?
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