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二
大学病院のエントランスを潜り一般駐車場と職員駐車場に分かれている道を通過すると、職員駐車場の出入口手前に感染症センター救急への入口があった。そこで警察が車の誘導をしている。サイレンを鳴らした消防車を優先するように通しているようだ。その先には忙しく走り回る警察官や消防士の姿も見えた。小栗はその状況に言葉を失い、穂香が無事かどうか心配で居た堪れなくなっていた。
そこへ通行規制をしていた婦警が小栗の車へと近寄り窓ガラスをノックする。
「一般車両は、反対側の駐車場へお回りください。火災発生のため急患なら違う病院へ!」
そう言いながらも帽子を被っていた小栗が不審者に見えたのか窓を開けるよう検問してきた。
「よう、広瀬。助けに来てやったぞ」
窓を開けておもむろに帽子を外した小栗は広瀬綾巡査の顔を見上げる。
「あら、小栗警部補? 今日、非番だったんじゃあ……」
気まずそうな顔を向ける広瀬。警部補にまさかの職務質問をしようとしていた自分が恥ずかしくなったようだ。
「ちょっと知り合いがいてね。火事だって聞いたから飛んできたよ。マジ大火災のようだな」
「ええ。まだ詳細は不明ですけど。あ、車ならあっちの端にでも止めといてください。私が許可します」
広瀬巡査は小栗の車を誘導し、行き止まりになっている端のスペースをあてがった。
「サンキュー」
小栗は一礼すると急いで車を駐車させ、消防士が照らす感染症センター救急棟へと走り出した。穂香の安否が気になり、どうしても会いたくて仕方がなかったからだ。捜査協力をしたいのは山々だけれども、今はそれどころではない。
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