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六
朝日が昇り始めた頃、ようやく消防士たちがホースの片付けを始めた。今日は天気も良く日差しが眩しい割には、この冬一番の冷え込みで寝不足の身には非常に堪える。
とりあえず火災発生現場がどこだったのか消防士に尋ねに行くと、出火原因は地下にあるボイラー室だったとのこと。ちょうどCTなどの検査室真下がボイラー室だったようで、地下から突き上げるように燃えた炎で辺り一面穴が空いたようになったという。
「それってボイラーの故障か、何かだったんです?」
消防士に尋ねるも、鎮火してすぐではよく分からないと言う。時間をかけて検証するしかなさそうだ。
それよりも問題なのは放火の線だ。もしも放火なら犯人を見つけなくてはならない。それをどうやって見つけけるかだ。
救急棟はそれでなくても人の出入りが多い。診療に関わった患者のデータは残っていても、その付き添いのデータまではさすがにない。
こうなれば、その日に働いていた職員たちに片っ端から尋ねるしかないか。どんな人が出入りしたかをできるだけ詳細に知るために。
「兄ちゃんもおむすび喰うけ? 温かいお茶もあっちにあるから良かったらどうぞ」
夜中に本館でおむすびを配っていたおばちゃんだ。今度は消防士や警察のためにわざわざ朝早くから作って持って来てくれている。
「ありがとな。おばちゃん」
小栗は手袋を外して、そのおむすびを頂いた。手にはなんとも言えないおばちゃんの温もりを感じる。
「先輩! 本部から連絡がありまして、十三時に捜査会議するそうですよ。とりあえず現場検証したら戻って来いって」
「了解」
佐藤と鑑識たちは出火原因となったボイラー室へと駆けて行った。まだ勤務時間外だった小栗は放火を匂わすような来客がいなかったか、救急棟のスタッフを探しに本館へ戻る。
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