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エピローグ
2年後――。
綺麗な病院だった。小規模ではあるが、横浜では評判の良い産婦人科だ。
赤ちゃんの大きな泣き声が聞こえてくる。
分娩室から出て篤志の姿を見た看護師が、声をかけてきた。
「おめでとうございます。元気な男の子ですよ」
「あっ、ありがとうございますっ!!」
大きく頭を下げ、そして室内へ。
ベッドには彩名が横になっている。脇にはインファントウオーマー。そこに、生まれたばかりの赤ちゃんがいた。
「彩名、お疲れ様、よく頑張ったね。本当にありがとう」
篤志が声をかけると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
そっと、新しい命に目を向ける。看護師さんが来て、寝ている位置を調整してくれた。
右耳の後ろが見えた。
3つのほくろが三角形を成している……。
ホッと息を吐き、赤ちゃんを見つめる篤志。
もう、絶対に辛い思いはさせないからね……。
母子ともにゆっくり休み始めると、篤志はロビーに出た。
大きな窓から、明るい陽の光が射し込んでくる。
あっ……!
空の片隅に、竜ちゃんの姿が見えた。手を振っている。
ありがとう、竜ちゃん。
篤志は微笑みながら手を振り返した。
Fin
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