祈るお姫様と三人の執事

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 凍てつくような寒さの中、スミル姫はたった1人で(いの)っていました。 「氷の花をこの国の皆の為に……私は皆さんのことをずっと(おも)います」  スミル姫は三人の執事(しつじ)に言いました。 「私がここからいなくなっても、あなた達はどうか悲しまないでね」 *****  三人の執事は、(さん)兄妹(きょうだい)でロム、ケミクル、セレンという名前でした。  ロムは一番上の兄、スミル姫にとってもお兄さんのような存在でした。いつもスミル姫のことを気遣(きづか)って、気に掛けてました。優しいお兄さんです。  ケミクルは二番目の兄、小さい時は元気一杯の少年でしたが、大人になって執事としてしっかりと役目をこなしてました。  さて、問題は一番下の妹セレンでした。昔はケミクルと同じで元気良く、スミル姫も大好きで可愛い女の子でした。しかし、成長し大人になるにつれて劣等(れっとう)(かん)が表れてきたのです。  上の二人のお兄さんと違い、何をやっても裏目に出てしまうとセレンは自分で思い込み、そして、その思い込みの(くせ)がついてしまってからは、もっと大変な目にあってしまいました。  例えば、お茶会で用意するお菓子やお紅茶をテーブルへ綺麗(きれい)に並べても、最後のティーカップを乗せる時に滑ってクロスごとテーブルから全部落としてしまったり。  お客様のコートをコート掛けに掛けようとしてたけど、(あやま)って近くの暖炉(だんろ)に落としてしまったり。スミル姫のお洋服をぞうきんと一緒にしてしまい、お掃除に使ってしまったり……。 「なぜ、私だけこんなに運が悪いのでしょう」と自暴(じぼう)自棄(じき)になっていました。  でも、勿論(もちろん)悪いことばかりではありません。 「セレン、それは兄さんがやっておくからね、あちらをお願い」 「僕が()わりにやるから休んでなセレン」  ロムとケミクルはセレンの為に普段から助けてあげてました。いつもとても優しいお兄さん達でした。
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