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ある日、スミル姫が三人の執事に言いました。
「この国には貧しい人が多く、明日……いえ、今日も苦しんでる人達がいるのでしょう? そうよね?」
三人の兄妹執事はスミル姫からの突然の問い掛けに驚き戸惑いました。
「だからお城の財産を貧しい人達に分けてあげようと思うの、皆に少しずつね」
それを聞いた執事の兄二人は困りました。お城の財産と言っても国中の人達に分け与えるほど多くもありません。逆に与えすぎるとお城の威厳が損なわれてしまい、国を治るお城としてその役割を果たせなくなってしまうと考えたのです。
「姫様、それはいけません。多くの人にお金を与えれば、今度はお城の財産が無くなってしまって誰も姫様の言うことに聞く耳を持たなくなります」
そう言ったのは一番上の兄ロムでした。
「お金が無い人の言うことには、誰も聞く耳を持たないの?」
「そうです」
ロムは一歩として引きません。それを見たスミル姫はまた考えてこう言いました。
「じゃあ、食べ物を送りましょう。ロム、ケミクル、早く食べ物を買い集めて街の人達に配るのです」
それを聞いた兄二人はまた困りました。なぜならこの国では今飢饉が起こり、食べ物はごく少なく王家に優先して売られていました。食べ物は限られていたのです。
「姫様、それも出来ません。この国では今、食べ物がとても少ないのです。私達の食べる物も無くなってしまいます」
そう言ったのは二番目の兄ケミクルでした。
「そんなにも買える食べ物がないの?」
「そうです」
ケミクルも一歩として引きません。
「それはおかしいわ、お兄様方」
そう言ったのはなんと、一番下の妹のセレンでした。
「そもそも食べ物がないなら、お金を与えてもだめだわ、だってお金で買える食べ物が無いんですもの」
セレンは話を続けます。
「あと本当に食べ物がないなら、今の私達はどうして生きていられるの? 私達は毎日いっぱい食べ物をいただいてるわよ」
「お前は分からないのだから話すんじゃない!」
「もう、兄さん達の邪魔をしないでくれ」
ロムとケミクルは妹からの言葉に怒り、初めて大声で怒りました。
「分かりました。もういいわ、ありがとうセレン……ロムもケミクルもありがとう」
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