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「捕まえた。」
あっという間にあの男に抱き抱えられる。
「本当に簡単に捕まるな。面白いほど。なあ、結衣?」
抱き抱えられた状態で耳元で囁かれる。
ぞくぞくとするなんとも言えない感触に襲われる。
「顔が真っ赤だな。いい加減慣れたらどうだ?」
ふっと、今度は耳元に息がかかった。
無理、無理、無理!!
「さてと、どうしょうかな?」
ペロリと唇を舐める仕草に顔色が真っ青になる。
「離して、離してってば、この性悪男!!」
「煩い、俺の名前は性悪男じゃない。」
抱き抱えながらも、なんとか喚く。
「いいか?簡単に想いは忘れられないし、いつまでも心の中に残るんだ。君を見るたび、アイツが脳裏から離れない。だから止めたかった。純血の血は濃すぎるがゆえに、あの世界では跡取りが必要不可欠なんだよ。アイツの血を欲しがってる、あの世界では山程いた。」
「………………。」
「君が、如月夏穂さんを忘れられないのもあるしな?」
「………………。」
黙っている私をみて、あの男がふっと唇を歪ませていたのは気づかなかった。
「俺も甘いが、君も甘いな。このように話して弱らせて食べる奴らもいるんだよ。このようにね?」
「へ?」
唖然としていると、あの男の顔が首筋に近づいてくる。
注射針で刺されるより、もっと鋭くて尖った物が突き刺さる。
ズブズブと音が聞こえてきた時には遅かった。
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