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「白井君」
白井さんは慌てて先生の方を向かれました。
「はい」
先生は煙草を咥えて燐寸で火をつけられました。
そして煙を一口吐かれると、
「君の知り合いに漱石先生の講義を受けた事のある者はいないかな」
と訊かれました。
「ああ…。確か社会部の方に…」
白井さんは温くなった珈琲を口にされます。
「明日にでも訊いてみます」
「頼む。どんな様子だったかだけでも知りたいんだ。こんな事なら一度くらい漱石先生の講義を受けておくべきだったな」
先生は煙草を呑みながら顔を顰めておられました。
余程苦労されておられるのでしょう。
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