第一章:出逢い

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山を下り、しばらく歩くと神主さんに出会った。 山道から続く長く細い道の道中には、神社がひとつ建っており、その向かいにはだだっ広い田園風景が広がっている。 その神社の前で声を掛けられたのだ。 「おや、灯縭ちゃん。こんばんは。」 気がつくともう空は紅く、夕暮れ時を示している。 「こんばんは。いつもお掃除、ありがとう。」 神主さんは箒を持つ手を止めて「いやいや、日課なもんでね。」と笑って言った。 そして「灯縭ちゃんは、叔父さんとこ行ってたのかい。」と続けた。 「うん。……あ、それでね。こちらのかたがー……」 振り返り、灯縭は言葉を失った。 (あれ。翡雨さん?) 先程まで一緒に歩いていた翡雨の姿が消えていた。 「ん?灯縭ちゃん、どうかしたかの。」 神主さんが不思議そうな表情をしている。 灯縭は少し嫌な予感を覚えつつも、何となく深く考えてはいけないような気がして「ううん、やっぱ何でもない。」と返した。 結局、その日は家に着くまで一度も翡雨と会うことは無かった。 (翡雨さん、先に帰っちゃったのかな。……うーん。) 何となく腑に落ちない気持ちのまま、灯縭は眠りについた。 (明日も、叔父さんのお墓参りに行こう……) 叔父さんに会えば、きっとどんなことが起こっても乗り越えられる。 そんな気がする。 小さい時から、実の両親より可愛がってもらった。 親や友達に話せないような相談事も、何でも話せた。 最も心を許していた。 兄のような存在だった。 弟がいる私は、人に『甘える』ことが苦手で、いつでも自分はしっかりしなきゃいけないと思ってた。 不思議だ。 そんな叔父には、もう会うことが叶わないのだから。 もう一言だって、言葉を交わすことも、あの優しい笑顔を見ることも、永遠に出来ないのだから。 「…………」 静かに、一筋の涙が頬を伝った。
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