序章:悪夢

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序章:悪夢

私は、美しい川が流れる森の中に佇んでいる。 川の水は速くもなく遅くもない、とても穏やかな流れ方をしている。 暫くその美しさに見惚れていた。 気がつけば、対岸に誰かが立っている。 とても懐かしいような、不思議な感覚だ。 よく知っている人物のような……気がする。 「誰だろう…」 不意に、その人物と目が合った。 質素な着物を身に纏った、髪の長い男性だ。 真っ直ぐで透き通るような綺麗なその目に引き込まれる。 同時に、何とも言えない哀しさに襲われる。 (目が離せない。) 一瞬、川の流れが速くなったような気がした。 つい先程まで澄み渡る青い空が広がっていたのに、激しい雨音も聞こえる。 涙が止まらない。私は何も悲しくないはずなのに。 フッと視界が暗転し、私は見慣れたベッドの上で目が覚めた。 全身に嫌な汗をかいている。気分が悪い。 「嫌な夢を見た……」 窓の外から雀のさえずりが聞こえる。 全くいつもと変わらない朝だ。 ただ、一点を除いて。
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