第二章 事件

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 菓子屋の真向かいにあるマルゲン理髪店に二人が入って行くと、店の中は立錐の余地もないほど人が集まっており、皆興奮して声高に話している。 「失礼。お話し中、申し訳ないですが、ここのご主人はどちらに?」  間宮がよく通る声で言うと、店内にいた人たちが一斉に彼を見て、瞬時に静かになった。 「私ですが?」  小柄な中年男性が間宮の前に来た。 「あなたがご覧になったのは、間違いなく小達なのでしょうか?」 「ああ、それなら私じゃありません。そこにいる島田さんが見たんですよ。私の碁敵で、島田青果店のご隠居の」  理髪店店主に指さされた老人が、大きく頷いて間宮の問いに答えた。 「小達で間違いありません。警察署で確認しました」 「はっきりと顔をご覧になったのですか?」  間宮は疑うような口ぶりだ。 「失礼ですが、旦那はあの探偵事務所の方ですね? あんたにお答えしないといけない義理でも?」  明らかに島田は気分を害している。間宮の言い方に、相手を煽るような無礼な響きがあったからだ。  大河内はとりなすように丁寧に説明した。 「ご主人、すみません。この探偵に捜査を手伝ってもらっているので、彼の質問は全て、私ども警察の質問と受け取って下さい。もう何度も聞かれて嫌になられているでしょうが、もう一度ご確認させて下さい」
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