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第二章 事件
間宮は光子に留守を頼み、大河内と連れ立ってビルから外に出た。
「しかし、今日来たばかりの娘さんに留守を預けたりして、随分と信用してるんだね」
大河内が少しだけ心配そうに尋ねると、間宮は笑って答えた。
「別に盗られて困るような物は置いちゃいないからね。現金も、大事な書類も貸金庫に預けてある」
「なるほど。抜かりないな」
「それにね、こう言ってはなんだが、天知君は『いいお家の出』のような気がするのだ。身上書は完璧だし、彼女の着ていたコートを見たかい? 上等な毛織だ。だが、あの身のこなしは、下衆な言い方をすると、やや蓮っ葉に見える時もある。不思議な娘さんだ」
「まあ、今は天知さんより小達を探ることに専念してくれたまえ」
二人がそんな会話を交わしながら水道筋まで来てみると、通りの入り口には規制線が張られており、警察関係者が大勢たむろしていた。普段平和な商店街は、物々しい雰囲気に包まれている。
「現場に入っても大丈夫かね?」
大河内が、事件現場の木村菓子店の前に立っていた若い警察官に尋ねた。
「はい、大丈夫であります」
彼は敬礼し、硬い表情で答えた。
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