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小学六年生のなずなに、想定できることは大人のそれに比べるとごくわずかだ。それゆえに、その小さな不安が赤黒いシミとなってじわじわ広がる。
そう、松丘の血まみれのハンカチのように。
不安にせきたてられるようになずなは、松丘の家への道を走った。気体のように。
無我夢中でしばらく走って、はたと立ち止まる。つま先がスニーカーに当たって痛いのだ。
つい何ヶ月か前に買ってもらったばかりの、ストーン付きのお気に入りなのに、もう小さくなったのかな。
そこで気がついた。
ぐねぐねに蛇行した細い道路の脇に、草ぼうぼうの空き地。向かいは田んぼ。松丘の家の周辺に、似ているようで何かが違う。
かかしも立ってない。――また道を間違えたのだ。
あー!とわかりやすく頭を抱える。やっぱり牧生を連れてくれば……!
――いや。これはなずなが解決しないといけない問題だ。すぐ誰かに頼ろうとする。ダメダメ。
持ち直して、キョロキョロとあたりを見回す。
ここは松丘の家の周辺ではないが、人っこ一人いないところはよく似ている。
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