6 走れ、なずな!

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まあ、人が通りかかったところで、話しかけるなんて恥ずかしくてできない。とにかく元来た道に戻ろう。そうすれば松丘の家にたどり着く――と歩き出すと、  なずなくらいの背丈の雑草が生い茂る空き地から、ふいに黒い影がにょろりと立ち上がった。 思わずそちらを見る。 ――顔ではなくて、その手元を。 なずなは視線を固定したのち、目を見開いてたちまち動けなくなった。念のために言うと、凍ったわけではない。 影がその手に持っていたのは、刃物だった。 ドロドロの、赤黒い、何かはわからない、けれども確実にわかる、血まみれの刃物。 「あ……あ……」 刃物。ドロドロの、血のついた、これは、これはもしかして、もしかしなくても、これは ――猫殺し。
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