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7 なずな、真実を識る。
「なんだよこれ!なんで――なんでなずながこんなことに!」
松丘のお父ちゃんが「とりあえずまあ、うち来る?」と連れ帰ってくれた彼の自宅で、――中は意外なほど整理整頓が行き届いていた、松丘の手によるものではあるだろうが――寝ていたと言う松丘が飛び起きてきて、ほとんど泣きながらなずなを抱きしめてくれて、今日のミッションをはたと思い出した。
が、松丘は間髪入れずに、
「お父ちゃん!早く警察に電話!」
「あ、うん……警察って……」
「110番だよ!」
電話したことないなあーとぼやきながら、松丘の父ちゃんが、高すぎる背をかがめながらふらふら隣室へ行って、なずなのおじいちゃんしか使ってないようなパカパカする携帯で電話をかけ始めた。
なんだか気の抜けたお父さんだ。というか、お父さんじゃないみたいだ。若くて頼りないお兄さん。
松丘がしっかりしてしまった理由は、大方あの父親にあるのだろう。
「大丈夫か?傷擦りむいてるな。すぐ手当……」
と救急箱を探し出す松丘の手を、なずなはぎゅっと握りしめた。
「――大丈夫じゃないのは、里帆だよ。」
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