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松丘が、ふいに握られた手に視線を落としたあと、まっすぐになずなに向き直った。
ボサボサの髪、だけど凛とした、松丘の美しい瞳。
なずなは少し汚れてしまったランドセルから、ジッパー付きのビニール袋に入れた例のハンカチを取り出して、差し出した。
「これ……」
「ずっと返そうと思ってて……返しそびれてた。ごめんね。」
なずなは息を深く吸った。儀式のように。
「里帆、生理用品……買えてないんじゃない?」
松丘は、一瞬止まったのち、差し出されたハンカチをおずおずと握りしめて、そして――下を向いた。
『あのさあなずな……あんたさあ。……生理始まったの?ちゃんとママに言った?』
昨日姉ちゃんは、眉を寄せてそんなことをなずなに言った。
『……なんでそんなこと言われなきゃなんないのよ』
姉ちゃんの方を見ずにつっけんどんに返す。
まだ初潮が来ていない、と言うのはなずなにとって恥ずべきことだった。イマドキの小六女子は大半がもう始まっていて、もはや来ていないのは少数派……な気がしている。あくまでイメージだけど。
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