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『あんたの机の上のハンカチ?見ちゃったのよ。あーいうのは汚いよ。血液は一番汚いんだからね。』
姉ちゃんが珍しくグイグイとくる。
ママが話しかけても、パパが話しかけてもすぐ怒るから、なずなが話しかけてるのにやっぱり怒る、超一級品の扱いづらい姉ちゃんのくせに。
『……ハンカチ?あれは……』
と言われて、ようやくピンと来た。
あれは、松丘の。
あれ?そしたらあれは……。
すらりと背の高い松丘。
大人の自転車を乗り回してる松丘。
コウムインになりたい松丘。
『姉ちゃん!頼みがある!』
なずなはもう一度ランドセルを開け、中からマスキングテープで封をした紙袋を取り出した。
「これさ、生理用品。」
姉ちゃんがなずなの『仮説』を聞いてさっさと用意してくれた。
何かのおまけでもらったという未使用のポーチ付きだ。
姉ちゃんは他人にはどこまでも優しい。
「あたしの勘違いだったらごめんだけど――ずっと……辛かったんじゃないかと思って――」
松丘は何も言わない。
でも、力無く膝に置かれたハンカチに、ぽつ、ぽつと雫が垂れていて、彼女が初めて泣いていることを知らせる。
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