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大人っぽい松丘じゃなくて、しゃんとしてぴんとして凛としてる松丘じゃなくて、年齢相応の少女らしい、それは静かな泣き顔であった。
「買えない、わけじゃないんだよ。」
と松丘はぽつぽつと話し出した。
「買わない、わたしが悪いんだ。父ちゃんはたまには仕事してきて、お金もらってくるんだからさ。だからたまには、買ってたよ。うん。買ってた。でもあれってやっぱ、ちょっとな。うん、ちょっと買うの恥ずかしい……んだよな。あとさ、まあお腹痛い時あるんだけど、薬って高いしな。子供は買えないしさ。」
辿々しく、言葉を探りながら、語る松丘の語り口が、なずなは悲しい。
この期に及んであのお兄ちゃんお父ちゃんをかばっている。
松丘はもっと怒っていい。松丘はもっと泣いていい。小学生は誰にも気なんか使わなくていい。
これは立派なギャクタイだ、と姉ちゃんは言った。強い言葉になるけれど、お兄ちゃんお父ちゃんは知らないわからないでは済まされない。
なずなはすごく怒って、今すぐ松丘のお父ちゃんに怒鳴り込みたい、と意気込んでいたのだが、姉ちゃんに制された。それは違う、と。
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