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隣町の図書館。
ガラス越しに、広場を走り回る子供達をぼんやり眺める。自分より少し幼い子に混じって、その弟か妹に見える幼児も何名か遊んでいる。横並びの木製のベンチに視線を移すと、母親同士はおしゃべりに夢中で子供のことなんか全く見ていない。
そろそろと腰を上げる。
広場への出入り口に手をかけたその時、腕を掴まれた。
「――何するつもり?」
「……松丘……」
薄暗いその廊下で、松丘の白い顔がぼんやりと浮かび上がる。眩しいものを見るかのように、細く開いた松丘の目。何を考えている顔なんだ。どんな表情なんだよ。
腕を掴む力を全く緩めることなく、松丘は信じられないことを言う。
「わたし、見てたんだあの時。あんた――」
松丘の顔が耳元に近づく。空気が震えるくらいのわずかな音量で、彼女は囁いた。
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