特別な日

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 まだ高校に入って一年目なのに、気づいてしまった。  高校に、本当の友達はいない。  高校に、俺にとっての『特別な日』は存在しない。  高校で、俺が主人公になることなどない。  俺は今日、ずっと「おめでとう」と誰かから言われるのを待っていた。  いつもは始業のベルとほぼ同時に学校に来るが、今日は始業のベルの一時間以上前に、一番乗りで来た。いつもは授業が終わったら誰とも話さずにそそくさと家に帰るが、今日は授業が終わってから一時間以上椅子に座っていた。  誰かが教室内で「た」と発音する度に、俺はその声が聞こえた方に顔を向けた。しかし、その後に続く言葉は決して「んじょうびおめでとう」ではない。悲しいかな、俺に話しかけているわけでもない。  もちろん、俺が今日誕生日だということを周りの人に伝えるために努力はした。  直接「誕生日だ」とは言わなかったが、昨日のうちに、今日俺が誕生日であるということを匂わせるメッセージをクラス全員、一人ずつに送っておいた。 『明日のちょうど十六年前は、もしかしたら俺の両親にとって最高に幸せな日だったかもしれない』と。  全員が全員、俺のメッセージをスルーした。  今朝学校に来たら、俺は真っ先に黒板の方へ行き、『日直』と書かれている場所に俺の名前を書いて、ケーキのイラストを付け足しておいた。  後から来た生徒に、俺の名前とケーキのイラストを消され、本当の日直の人の名前を書かれた。  俺は今日「おめでとう」と言われることを、一年中、他の人の誕生日を祝うのを忘れるくらいワクワクしていた。  しかし、待てども待てども、俺が祝われることはない。それどころか、教室は他の話題で持ちきりになっていた。
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