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僕らはコンビニのアルバイトで知り合って2ヶ月になる。交際するまでは行っていないけど友達以上恋人未満の関係を続けている。
最初は喧嘩ばかりしていたけど、最近は一緒にオンラインゲームをする仲になった。ゲームの中の勝負で勝った方が負けた方にUber Eatsを奢らせるっていう新しい遊び方にのめり込んでからは、昼夜問わずゲームに没頭した。
新年がやってきて、アケオメのメッセージが飛び交う中、直美とアキラは元旦早々からゲームに没頭する。
お互い実家暮らしだし、今年は親戚との交流も全くないから、とにかく暇なのだ。近所の神社にお参りするような古臭い風習なんて、僕には関係ない・・と思っていたのだが、チャットのウィンドウに、直美のメッセージ。
『ねぇ、これから近所の神社にお参り行かない?お父さんの事もあるし』
直美の父親は先日、自転車で転んで大怪我をして入院している。健康祈願をしたい、という申し出だ。
『わかった。行こう。』
そんなやりとりをして、人生でまともに初めて神社にお参りに向かう。
遠くに、学生時代の友人がちらほらと見える。
それは直美も同じで、早速、数人の友達に囲まれている。もう学校やめてしまっているから、同級生ではないのだが、僕と一緒に歩く姿にとても驚いていた。
「おめでとう!彼氏できたんだね!」
「い・・いや・・彼氏っていう感じじゃないんだけどね。」
数名の直美の友達がからかい半分に僕と直美をジロジロと見比べる。
「直美をよろしくお願いします。この子、負けん気が強いだけで、本当はとてもいい子なんです。」
直美の友達が数名、僕に対して深々とお辞儀をすると、その場は去っていった。
僕らは神社で参拝を終えると、鳥居を後にする。
「何お願いしたの?」
直美から、ありきたりな質問が来る。まるで恋人同士の会話みたいだ。
「いや・・・そういえば何もお願いしなかったかも。」
「え!もったいなーい。もう一回戻ろうよ。ちゃんとお願いしたほうがいいよ。」
「うん・・・いいよ。」
「えー。信じられない。私なんて神様にお願いしたい事、山のようにあるのにー」
「もう、願い叶っちゃったし。」
「え?何の願い?」
「君とデートができた。」
「えっ(ドキッ)あっそうだね!初デートだね!私の呼び方だけど、君とかお前とかでなくて、そろそろ、直美って呼んでくれていいよ!」
急に直美が僕の正面に回り込んで、あたかも神主がお祓い棒を振るように、手を左右に揺らす。
「おっほん。私は神である。私はそなたの心を知っておる。そなたは、私と交際したいと思っている。」
ニコニコしながら直美は、お祓い帽の脇から、僕の顔を覗き込む。
「おめでとう。願い叶ったよ。」
しばらく間を置いて、直美は満面の笑顔。
「わかるよ。痛いくらいに。アキラが私の事を好きだって。私も好きすぎておかしくなりそうだったもん。」
その日から、僕らは外出時に手を繋ぐようになった。
これからずっと、直美と手を繋いで歩く人生になればいいなと、思った。
(おわり)
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