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幼馴染の三武郎が今年の三月に結婚する。そのスピーチを任された俺は、小学校の卒業アルバムを開いて昔を振り返ってみた。
幼馴染の結婚式だ。少しくらい粗相があっても、いいじゃないか。
アルバムの中の三武郎の無邪気な笑顔がそう語り掛けてくるようで、俺は思いつくままにペンを走らせた。
『三武郎は数字の三に愛されし男だと思います。
まず誕生日が、平成三年三月三日です。
それよりなにより、名前です。さぶろうとするならば、武士の武を抜いて、二文字の三郎でも良かったのではないのでしょうか。
漢字の中に武という字を付けた御両親さんは、三人目にして初めて男の子が生まれたことに、きっと特別な喜びと期待を感じていたのでしょう。
武士のような強い心を持った男になれ、的な気持ちだと思います。
その願いは、しっかりと三武郎の中に根付いていました』
自己紹介とあいさつは慣れているから、書くまでもない。
漢字の説明がややこしいけど、まぁ、伝わるだろう。
以前、本人の口から直接聞いた俺が理解できたのだから、きっと大丈夫だ。
俺は再びペンを走らせた。
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