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『三武郎は小学生の陸上大会で百メートル走に出場し、三位になりました。
運動音痴な僕は、それを観客席で見守っていました。
散々練習に付き合わされて、それでも足りないと言って朝晩の校庭を走っていたらしいですね。
偶然見かけた誰かが噂していたのを覚えています。
校庭で誰かが走っている。雨の日も風の日も。朝も、夜も。あれ、幽霊だよって。
そんな三武郎が三位になりました。
正直僕は悔しかったです。
いっそのこと、本当に幽霊だったなら。少しでも積み重ねた努力が少なければ、ショックも和らいだだろうって。
そんなことを考えていると表彰式が始まり、僕の胸の鼓動はますます音を立てていきました』
幽霊のくだりは笑ってくれるだろうか。
ここは会場の温度に合わせて調整しようと、印を付けた。
自慢ではないが、結婚式のスピーチは多少慣れている。このくらいのアドリブならなんとかなる。
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