三に愛されし男

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『僕は自分の器の小ささを感じました。そして表彰状を受け取る瞬間、一番誇らしげな顔をした三武郎を見て、思わず叫んだのです。 「おめでとう! 三武郎!」って。  三武郎はこっちを見て大きく手を振ってくれました。  すると、それを待っていたかのように、一位、二位の時とは違う不思議な高揚感が、競技場全体を包み込んでいったのです。  おそらく、他の選手には悪いけど、一番観客におめでとうと思われたのは、三武郎だったのではないかと思います。  きっと明日香さんも、そんな、なにがあっても笑顔を絶やさない三武郎に惹かれたのでしょう。  でも、ここからは内緒にしていたことですが。  他の同級生に聞いたのです。本当は、すごくすごく悔しがっていたことを。  三武郎が入ったトイレから、すすり泣く声が聞こえていたことを。  そこで僕は再び自分の小ささを知りました。  きっと僕のために、笑顔でいてくれたんだなって』    俺は新婦さんの名前だけは間違えないように、何度も名前の部分を読み直した。  我ながらいい話だと思う。あとは軽いエピソードをいくつか挟んで、締めの言葉へ繋いでいくことにした。
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