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僕はそれをはためかせると、気持ちの粒子がふわりふわりと観ている者へと舞い降りる。
その様は言いようのない美しさだった。美という一言では語り尽くせない、輝き、色、心だった。
僕は心というものが実質化して形となっていることに感動した。この瑠璃シネマの世界だけでなく、現実世界にもこれがあったならと今でも観るたびに毎回思う。心が清らかに浄化されていく。
たくさんの気持ちがふんだんに織り込まれたシネマの上映が終わると、若い女性は帰って行った。
トンランという猫は、なにやら紳士と話をして最後に微笑むと僕に一礼してゆっくりと消えていった。
最後に残された若い女性の父親は、自分の素性を僕に話し始めた。
僕はゆっくりと時間を惜しむことなく話に耳を傾けた。
全てを語り尽くすと、先ほどの猫と同じようにゆっくり、ゆっくりと満足気に消えていった。
僕の姿は自分では確認できない。
皆、一様に僕のことを「瑠璃様」と呼んでいた。
きっと、この「瑠璃様」を祖父はずっとずっとやってきていたのだ。
僕はこの瑠璃という青い石に選ばれたらしい。祖父から引き継いだこの貴重な役割をできる限り、丁寧に果たしていこうと思う。
僕はまだ若い。
経験も思慮もまだまだ浅い。
人と人の繋がり。絆。運命。
僕にはまだ実感したことがない言葉たち。
青い石から授けられた宿命。
人の数ほどある物語をシネマのフィルムに織り込んでいく僕。
今回は、そんなまだ若輩者の僕が織り上げたシネマを幾つかご覧に入れました。
今後、もしかしたら…、
あなたのシネマも織り込むことがあるかもしれません。
招待状が届くのか、はたまた差し出す方か、シネマのホストになるのか。
その時まで、配役を楽しみに…。
いつか、瑠璃シネマでお待ちしています。
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