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少し行くと、まるでそこだけ木々が生えるのを躊躇ったかのように、ポカリと開けた場所に出た。
その真ん中では雪雲に覆われた紺鼠の空を、枝に邪魔されることなく仰ぐことができる。
魔女の家くらいなら建てられそうなそのスペースの中心に、私はゴロンと横になった。
空から落ちてくる花弁雪が一つ、また一つと顔に降りつもり、水滴へと変わる。
ここに来てもうすぐ一年になる。
全てを捨てて、この場所に来たことを後悔したことは一度もない――。
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