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 森の中は一面、白銀に包まれていた。  粒の大きな綿雪が、宵闇(よいやみ)の空からふわり、ふわりと落ちてくる。  分厚いジャケットの上、小さく開かれた口から漏れる吐息が空気を白く変えていく。  朝から降り続いた雪は、昨日まではあった轍を覆い隠していた。  衣擦れと一歩進むごとに鳴く雪の音。  まるで動きを忘れたかの如く冷たい静寂に包まれるその森に、二つの音がやけに大きく響いている。  キュッ、キュッ、キュッ、キュッ……。    新雪に残る私が歩く軌跡。  今と過去(さっき)を繋ぐ跡――。
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