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睡眠薬の効果
「……なるほど。誰かが陽向くんに睡眠薬をね」
陽向がキスをされたという話はうまくぼかして、私は美村先生に事情を説明した。先生は私の話を思った以上に真剣に聞いてくれた。
「あの、睡眠薬って、本当に効くものなんですか?」
今さらだけど確認したくて聞いてみた。すると先生は「効くよ」と得意げに口角を上げた。
「睡眠薬には超短時間型から長時間型までの四種類があって、どんな時に眠りたいかとかどのくらいの長さで効いて欲しいかによって飲み分けるの。陽向くんの場合は寝ていたのが30分くらいだったから、服用したのはおそらく超短時間型ね。これは寝つきの悪い人が眠りに落ちたい時に飲むもので、効き目はだいたい15分から30分くらいで現れて、持続時間も短いからすぐ起きられるの」
「へえ〜」
陽向は興味津々といった表情だ。
「短時間型は夜中に目が覚める人には効果的で、効果が現れるまで60分くらいまでかかることもある。中間型や長時間型は朝までよく眠れるけど、その代わり、起きた時にふらつきやめまいが起きることもあるし、記憶が曖昧だったりすることもあるの。陽向くん、そんな感じはなかったよね?」
「はい。パッと目が覚めました」
「それなら、服用したのはやっぱり超短時間型ね。飲んだのは部活中か、あるいは部活後かもしれないわ。運動で疲れていたら寝つきが良くなるし、数分で効いちゃうかも」
部活中の飲み物や食べ物が怪しいと思ったことはどうやら正しかったらしい。
「それで……どうして先生は陽向にだけ違う味のアイスを配ったんですか?」
「ああ、それはね」
美村先生は陽向を見てちょっとバツが悪そうに笑った。
「実を言うと、バニラが売り切れで足りなかったの」
「ほら!!」
陽向は私の顔を見てパチンと膝を叩いた。
「やっぱりそうなんだって! 深読みしすぎなんだよ、昴は!」
「何よ、自分じゃどうにもなんないから助けてくださいって頭下げてきたくせに!」
私もカッとなって言い返した。
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