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元気なひまわり
瀬戸さんのいる校舎は私たちの校舎とは別棟になるそうだ。
うちの高校は普通科と英語科とビジネス科に別れていて、普通科が二校舎分を使い、英語科とビジネス科で一校舎を使っていた。
校舎は上から見るとカタカナのコの字のようになっており、並行した横長の校舎を結ぶ縦長の校舎が英語科・ビジネス科用になっている。
瀬戸さんはそのビジネス科の校舎にいるらしい。
ビジネス科はパソコンを使ったIT技術や、経済関係、簿記といった専門的な授業を行なっているという。普通科の私たちよりも偏差値が上の人たちがこの科に入る。
頭がいい上にバスケ部で運動神経がいい後輩。それだけでもう勝てる気がしない。ビジネス科の校舎を歩くだけで肩身が狭い思いがする。
けれども陽向は全く臆することなく堂々と廊下の真ん中を歩き、逆にアイドルのような黄色い悲鳴を浴びていた。
「おーい、瀬戸! いる?」
目的の教室を見つけると、いきなりガラッと扉を開けて、陽向は教室の中をキョロキョロと見回した。
「えっ、陽向先輩⁉︎」
手前の席にいた男子が振り返った。
いや、よく見るとその男子はスカートを履いている。顔もよく見ると肌がつるんとしていて可愛かった。
髪がベリーショートだからか、男子と間違えちゃったけど、彼女が瀬戸さんで間違いないだろう。
「ど、どうしたんすか、陽向先輩! まさかアタシに会いに……?」
慌てて立ち上がった彼女は真夏の元気なひまわりのように私の身長を簡単に越えてきた。
彼女は170センチだったっけ。180センチの陽向と並んだらちょうどいい。
「ちょっと話あるんだけど、廊下までいい?」
「あっ、は、はい! もちろん!」
嬉しそうな笑顔。一発で分かった。
瀬戸さんは陽向のことが好きなんだ。
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