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大丈夫
◇
五時間目終了後の最後の休み時間に、陽向と琉星くんはひかりさんをバスケ部の部室まで呼び出した。
私も行っていいものかどうか迷ったけど、陽向は迷いなく私を誘ってきた。
「私はお邪魔だから行かなくていいんじゃない?」
「ここまで付き合ってきてそれはないだろ? 本当のことが知りたくないか?」
「……知りたい」
「おっ。昴が素直になってる。珍しい!」
からかわれて恥ずかしかったけど、嬉しそうな陽向の笑顔に、たまには素直になってみるのもいいかと思ったりもした。
どんな結末が待っていたとしても、もう逃げずに受け入れる。
陽向と琉星くんの話を聞いていて、何となく覚悟が決まった。
そんな私を、陽向の強くて優しい眼差しが包んだ。
「大丈夫だよ。行こう」
校舎から校庭へ、さらにその奥にある別棟へ。
別棟には校庭を突っ切って行く方法の他に、体育館からの渡り廊下を通って行く方法がある。
渡り廊下は狭く、二人並んで歩くと窮屈に感じる。
別棟に入るとすぐ目に入る階段は、二階の女子運動部の部室へ行くための専用階段だ。男子はここを上がってはいけないという暗黙のルールがあり、それを破ると部活停止処分が下されることもあるという。
だが、女子が男子の部室に入ってはいけないというルールは何故かない。
もちろん、滅多に入るべきではないだろうけど。
階段の先の廊下には小さな小部屋がいくつも並んでいて、それぞれのドアに部活名が記された表札がついている。ドアに鍵はついていない。
部室の中には部員一人一人の専用のロッカーと、細長いベンチと、作戦会議用のホワイトボードなどがある。
昨日の光景とほぼ同じだ。
一つだけ違ったのは、そこに二人の人物がいたことだ。
一人は琉星くん。
そしてもう一人は、髪が長くて少し幼い顔立ちをした美少女──織川ひかりさんだ。
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