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三年前の真実
「俺と琉星が初めて出会ったのは三年前の夏の地区大会の時だった」
三年前。
それはひかりさんと陽向が付き合い始めたのと同じ年だ。そういえばその年、陽向は琉星くんとも出会っていたんだっけ。
「お互いに中二で、背も同じくらいで、テクも五分五分って感じでさ。ライバルになりそうで初めて見た時から気になってたんだ。しかも琉星はあの頃からすごいイケメンで、超目立ってたし」
「それはお互い様だろ? お前らの中学の応援席、女だらけだったじゃねえか。みんなお前目当てだったんだろ」
「え、そうだったっけ?」
確かに、陽向の応援にはいつも女の子の集団が駆けつけているイメージがあった。陽向にとっては仲のいい友達が来てくれている印象しかなかっただろうけど。
「とにかく、俺は琉星が気になったから、試合後に声かけてメアド交換したんだ」
「……図々しい奴だなって思ったぞ、俺は。知らない中学の奴が勝手に俺たちのチームに紛れ込んできやがって」
「その時、それを見ていたやつがいたんだ。それがひかりだよ」
ひかりさんが頷いた。
「ひかりはあの試合の時、お前に一目惚れしたんだよ。琉星」
「……えっ?」
琉星くんが驚き、ひかりさんは恥ずかしそうにうつむいた。
ひかりさんはその時から琉星くんが好きだったのか。二人の出会いはひかりさんが陽向と別れた後だと思っていたけど、ずいぶん早い。
「それで、俺が交換した琉星のメアドを教えてほしくて、ひかりは俺につきまとってたんだよな」
「やめてよ、恥ずかしい」
ひかりさんは自分の顔を手で隠した。
もしかして、ひかりさんが陽向にしょっちゅう話しかけていたのは、そういう下心があったから? そう考えると、当時の二人の見え方が全然変わってくる。
「でも、琉星がどんな奴なのか俺もまだよく分かんなかったから、まずは俺が友達になろうと思って。ひかりに頼まれて琉星の好きなものとか聞き出したり、バスケの話とか志望校どこにするかとかいろいろ聞いたりしているうちに本当に仲良くなったんだ。で、こいつは推せると思ったからいよいよひかりを琉星に紹介しようかってことになったのが秋ぐらいのことだったかな──」
三年前の秋といえば、私がひかりさんに告白している陽向を目撃した頃だ。
「二人を引き合わせて、メアド交換させて、やっと仲人終了かなって思っていた頃に、ひかりからまた相談されたんだ。琉星がひかりのことをどう思っているのか分からないから、気持ちを聞き出してくれって」
──ひかりのことが好きだって言ってんだよ
──本当に⁉︎ 嬉しい!
三年前の放課後の光景と二人の表情が蘇る。
まさか、そんなこと?
私が目撃したのは、その琉星くんの返事をひかりさんに伝えていた場面だったの?
衝撃で目の前が真っ白になる。
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