出来る限りのおめでとうを

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✳︎✳︎  2月2日の今日、未和が産まれた。  体重は1300g、私のせいで他の子より小さく産まれてしまったけれど、保育器越しに会えたあの子は言葉で表せないくらい、とても愛おしかった。  指が長くて、爪の形がとっても綺麗だった。  顔は女の子だから、私よりもパパ似なのかなって思った。  病室に一人で戻って机に向かうと、帝王切開の傷が少し痛んだけれど、弱音なんて吐いてられない。  私は、1日も無駄には出来ない。  もうすぐ死んでしまう私は、未和のために出来ることをしなくてはいけないのだから。  夫に頼んで買ってきてもらった白い便箋を、机の上に用意する。  味気はないけれど、キャラクターや絵柄付きのものだと未和が飽きてしまうから、これでいいと思った。 『お誕生日おめでとう、1歳の未和』  文章を書くのも、文字も下手くそだけど、私は未和の為に手紙を書き始める。  私が死んだ後も、どれだけ私が未和の事を愛していたかが伝わるように、この世界に産まれてきてよかった、と未和が心から思えるように、私は願いを込めて手紙を書き進める。  書き進める途中で、1歳になった未和はどんな子になっているのだろう、と考える。  何歩、歩けるようになったのだろう。  ファーストシューズは、可愛らしいパステルピンクの色がいいな。  初めての言葉は、なんだろう。  パパでも良いけど、ママだったら嬉しいな。 『未和が何歳になっても、母さんにとっては永遠にあの頃のまま、愛おしい子どもなんだから』  書き終えた文字に、ポタリポタリ、と涙が滲んだ。  いけない、と擦るとボールペンの文字が少しだけ滲んでしまった。 「……さぁ、続けなきゃ」  書き終えた便箋を封筒に収めて、私はまた新しい真っ(まっさら)な便箋を用意する。 『お誕生日おめでとう、2歳の未和』  泣いてる場合じゃない、と涙を拭って、また未和への言葉を綴り始める。  それを書き終えたところで、夜更かしをしていたのを看護師さんに見つかって、叱られてしまった。
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