「それでも」

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 異様な雰囲気に包まれている。  普段滅多に席が埋まらない裁判所が今日は満員である。それどころかドアの向こう側でも入りきらなかった人たちが耳をそばだてている。  ざわざわと落ち着かない中、突然右手中央の扉が開いた。先ほどまでの喧騒が恐ろしく静かになる。無音の中、手錠をはめられた男がゆっくりと席に着いた。背筋の伸びた後ろ姿に東島省吾は一か月前のことを思い出していた。
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