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24)将来の夢
蒼は、かつて自分が過ごした児童養護施設「ひむかの園」を訪ねた。ここで15歳まで過ごした。
歌手になる夢を叶える気持ちが強く県内トップの公立高校への進学をやめ、たまたま入ったライブハウスで歌をオーナーに見初められ専属ミュージシャンになる事を条件に、所有アパートに住んでいた。
自分が過ごしていた頃に比べると「ひむかの園」は随分寂れている。施設長に聞くと、資金繰りが悪化し、遊具が壊れたままの状態が続き、閉鎖も検討しなければならないとの事。
自分がかつてお世話になった施設長は変わらずだったが、先生も何名か入れ替わっていた。10年近く経つとさすがにそうなるか、と考える蒼に、施設長は訥々と語る。
「本当は、こんな施設は無い方が良い。全ての子供達が温かい家庭で過ごすのが一番だ。しかし現実には、子供達がどんどん施設に来る…」
蒼は施設長の話を聞きながら、自分が「ひむかの園」に来たときのことを思い出した。両親を事故で亡くし、兄を殺され、1人残され親戚先で虐待を受け、それからここに連れてこられた。
最初は極端な人見知りで馴染めず独りぼっちだったが、茜の歌に再び出会い、歌や楽器に触れるうちに少しずつ心を開くことができた。そのおかげで、夢であるプロデビューに近づきつつある。
この施設にいる子供達の事情は様々だ。両親となんらかの形で離れ離れになった子ばかり。
死別だったり、親が育てられない状態だったり、虐待を受けた子もいる。
蒼は子供達と触れ合い、ドラムを教えたり、ドッジボールやかるた遊びに興じた。心から笑った。子供達も全力で遊ぶ蒼に懐く。最後はみんなで戯れあっていた。
死ぬしかなかった絶望から生きる希望に変えてくれた。
ここで再び「茜に会えた」
歌う素晴らしさと喜びもわかった。
絶対に売れて寄付しよう。直ぐに売れなければ。少しでも子供達が、将来を生きて様々な夢を実現させる為にも。
もし俺が寄付できない状態になる事も考え、同志を集めて繋ぐようにしなければ。
蒼は固く心に誓った。
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